寡黙なアーティスト

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故人様は88歳、喪主様は6つ年下の奥様でした。旦那様のお人柄をお尋ねしたところ、「とにかく真面目」のひと言から始まりました。お酒もタバコも嗜むことなく、寡黙で冗談なども言う人ではなかったそうです。ただ、ご趣味となると多彩で、中でも絵画、油絵がお好きだったとのこと。お子様も、「お父さんの日常は、仕事をしているか、絵を描いているか、そのどちらかでした」とおっしゃっていました。そして何より、お母様への愛情の深さは計り知れないものだったとか。

そんな故人様のご葬儀に関するご要望は、「親族のみで送ってほしい」ということだけ。口数が少なく、いかにも「日本の父」という印象の故人様の、ご家族に対する気遣いや愛情が垣間見えるような気がしました。奥様もその想いに応えるように、ご葬儀に絵画の道具を用意したいとご希望されました。しかし、故人様は何でも1人でされる方だったため、収納場所がわからず、見つからなかったと残念そうでした。

そこで私たちアムールは、油絵の絵の具や筆、キャンバスをご用意し、イーゼルと共に祭壇横にお供えしました。キャンバスは2つご用意し、そのうちの1つには可愛がっておられたお孫様に絵を描いていただき、ご出棺前に手形を捺してお棺へお納めしました。「向こうでも私の似顔絵を描いてね」とやさしく語りかけた奥様。そのお気持ちは、旦那様にしっかり届いたように思います。


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